「ちゃお!
フェティダペルシアーナの揺るがない事情集がやって参った訳だけども!
とりあえずずっとボクのターンって事で答えは聞かない訳だけどもっ!
あっ今カンペがでた訳だけども・・えーっと
『この物語は大半がラムダース(携帯電話)で書かれたので多少変なところがあるかもしれませんがご了承下さい』
・・っという訳だけども!
それじゃあ行ってみるけども!
ずっとボクのターン





























「いち、漂流者」
































「寒いの、そこが何故寒いか解らないけれどいたたまれないくらい寒くて、
私とうとう震え出してアスファルトが剥き出しになった冷たい道に座り込んでしまったわ。

その途端、私ったら一体誰に逢いたくて何を見たくて何をしたくて歩いていたのかしらと解らなくなった・・
それは寒さと同じで到底わかりっこない事だと悟ってしまったの。

それが、例えどんなに正義の味方で正しい人に違うだろうと言われても、
そんなの嘘だわと返せるくらいの変えようがない真実だったの。

ああそうよ、私は漂流者。ただ目的も無く、だだっ広い海に落とされた。
生きる事も死ぬ事も解らず流れ続ける、漂流者って。ただそれだけ解ったの。」


「目的なんかあったって漂流者さ。

辿り着けずに歎いて、もうただ浮くことしか脳がない木の死体に張り付いてるだけの漂流者。」

「あなたは陸にいるからそんな事が言えるのよ。海に入るのだって海水浴程度だわ。
何もなく、何も楽しめない私の気持ちなんてわかりっこない。」

「そうかもね。ただでさえぐちゃぐちゃで複雑な人の心、
君みたいに更にその上を行く複雑怪奇な心情なんて理解しがたいものだよ。
そんなの簡単に分かれば世界は退屈なくらい平和ボケしていけるでしょうさ。」

「じゃああなたも溺れてみなさいよ。
私に偉そうな事言いたいなら同じ気持ちになってから言ってよ。・・こんなの不憫だわ。」

「そうだね、でも僕は陸の人間。ここでどうやって溺れろと言うのさ。
でも陸だって不憫だよ。熱いし固いし、何より窮屈さ。」

「私の方が幸せに暮らしてるくせに文句ばかりの強請り者だっていうの。」

「そうじゃないさ。海だって痛い。陸だってそう。
どっちもどっちって事さ。」

「ふうん・・あなたはちょっと変わってるわ。
諭したいのか貶したいのか解らないもの。不可解ね。」

「僕にとっては君の方が不可解だよ。でも不愉快ではない。」

「あなたはもしかして・・
ひょっとしてあなたも漂流者なのかしら。」

「・・そうかもね。でもどちらかというと放浪者かな。
目的があろうと無かろうと、何処にも行けずにさ迷っている事には変わりないけどね。」

「でもただ気まぐれな波に飲まれないように怖がりながらも、

その波に流されるままの私と違ってあなたは、自分の足で歩けるじゃない。
どこへだって好きな所に行けるわ。」

「確かにそうだね。
でも行き場所が無いなら同じさ。海は自分の意思に反して勝手に流してくれる。
でもここは自分で動かなきゃ進めもしない。」

「ふうん。・・つまりやっぱりどっちもどっちって事なのね。」

「そうさ。どっちもどっちで、無い物ねだりさ。
あれをご覧。」

「なあに?」

「あれは、陸にいながらにして自分で動か無くても動いてくれるものだ。
バスって言う乗り物さ。」

「バス。素晴らしいじゃない」

「そう・・だけどね。
あれに乗っている人はみんな目的も行き場所も無い人達なんだ。
そういうのを考えられなくなったんだね。
かつ、君みたいに木の死体にしがみついてまで生き伸びようとも思えないのさ。
つまり、ただ流されているだけ。」

「・・それって、贅沢だわ。」

「贅沢?」

「ええ贅沢だわ。どこへでも快適に行けるのに、そんなのってないわ。」

「ふふっ・・君は本当に面白いね。
あの人達はまだ何か有るかもしれないから生きてみようかと思える僕達を羨ましがっている。
自分達にはもう何も無いから。」

「何よやっぱり無い物ねだりじゃない。頭が痛くなってきたわ。」

「僕もそうさ。吐き気がしてきた。」

「ねぇ、あなたの名前聞いても良い?」

「勿論。僕は、スオナ。・・君は?」

「スオナ。私はリマレ。」

「リマレ・・これでもう君とあなたの関係じゃなくなった。」

「そうね。名前さえ知れてしまえば、私は私であり続けられるもの。
私が忘れてしまってもあなたが・・スオナが覚えていれば。」

「そう。じゃあ陸に上がっておいでよ。それとも僕が海に飛び込もうか?」

「辞めてよ人魚じゃ無いんだから。
私は陸にたどり着いた、でもまだただの第一歩だわ。」

「まだただの漂流者って訳だ。」

「そう、ちょっと進化してただの放浪者って訳よ。」

「で?リマレは何処に行きたいんだい?
さっき言っただろう、陸に居れば行きたい所、何処にでも行けるって。」

「ええ・・そうね。
でもどこへでも行けるって考えたら・・何だか何処に行ったらいいか解らなくなってきたわ。」

「・・なんだいそれ・・贅沢な悩みだね。」

「あははっ!そうでしょう、ね、私今行きたい所、思い付いたの!
それはね、私が何をしたくて歩いていたのか、解るところが良いわ。」

「ふーんなるほど。じゃあ行こうか」

「スオナは何がしたいのかしら。何処へ行きたいのかしら。
それは私と同じ場所?違っても似たような所?
それとも全然違う所なのかしら。」
「さあ・・僕はずっとここにいるからね。もう自分が何をしたかったのかも解らなくなってしまったよ。」

「あら、そうなの・・。
じゃあとりあえず私が行きたい所に向かって歩いてるのね。」

「まあね。多分リマレと一緒。」

「どうして?私は目的があるわ。」

「目的・・なのかな。
君は君が何をしたくて何処に行きたくて溺れていたのか、それが知りたくて歩いているんだろう。」

「ええ、そうよ。あなたもそうだって言うんでしょう。」
「まあね・・、でもそれは目的じゃない。ただのキッカケだよ。」

「キッカケ・・。
じゃあそのキッカケが目的よ。私達の目的!」

「リマレは何かと目的をつけたがるんだね。」

「ええ、だって目的が無いと何処にも行けないじゃない。ここでは。」

「・・そうだね。ここはもう靴が必要な世界。リマレも靴を買った方が良さそうだね。」

「あっ、本当!どうりで痛いと思ったわ。でもあなたのもボロボロよ。」

「本当だ。気付かなかった!」

そして二人は歩いて行くのでした。
どこまでも
どこまでも

それが二人の揺るぎのない事情。
ただただ揺るがない事情。


どこかに辿り着けたのかは

まだ 小説の中・・。